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会長挨拶

2020年03月05日(木)
        

永契会会長 中尾 明夫(なかお あきお) (新制化18回)


昨年の総会で、長年ご尽力を頂きました古武弥英前会長の後任を務めさせていただくことになりました。私自身、このような役割とは最も遠い存在だと思っておりましたが、就任した以上、少しでも役に立つように尽力させていただきます。
昨年、大学の共通一次試験をめぐって、国会でも問題にはなりましたが、揚げ足取りの議論ばかりで、大学入試に本当に共通一次試験のような制度が必要かどうかの議論はなされていないようです。塾や予備校で受験技術を磨いた者が有利になるような試験制度は、学生から多様性を奪い、結果的に日本の科学技術力の低下に繋がっているのではないかと憂慮しています。我々の時代(1960年代)の入学試験には内申書もなく、一発勝負の感があり、かえって今よりも公平感があったように思います。
大学入試や人事考課などの人の評価というものは、元来、不公平で理不尽なものであり、公正無私な制度はあり得ないと割り切って、大学入試も文部省任せの横並びではなく、独自性を出し、個性豊かな学生を育てることに注力すべきでしょう。技術開発・研究開発のブレークスルーを達成するのは、そつのない優秀な学生ではなく、特殊な能力を持つ、ある意味で平均点以下の学生ではないかと感じています。私が、社会人になった当時、会社の研究所には、まだまだ余裕があり、自由な雰囲気の中で研究生活を送ることができ、全体としてそれなりの成果も生まれていたと思いますが、最近は、研究が厳密に管理され、短時間で成果が求められるようになり、成果が上がりそうな比較的身近な、こじんまりしたテーマが選ばれるようになったのではないでしょうか。人的資源以外に資源に恵まれない日本が、このようなことでよいのか、将来、ノーベル賞級の研究者が表れるのか、危惧しているのは私だけでしょうか。
大学を卒業してから、半世紀が過ぎ、今年は記念の同窓会を開くことになっています。懐かしい顔に合い、このような話題で議論しあい、旧交を温めるのが楽しみです。昨年の永契会総会で、久しぶりに石橋キャンパスを散策しましたが、きれいに整備はされているものの、50年前ののんびりとした風情はなく、没個性的で殺風景な感じを受けました。歳を取ったせいでしょうか。
研究にはあそびが必要です。今の時代、企業には無理でしょうが、せめて大学には、計画通りに進む研究ばかりではなく、研究結果が何の役に立つかわからないような研究も許容される場、働き方改革も無縁な、研究のための研究、面白いから、知りたいから研究することが許される雰囲気、を残してほしいと思う今日この頃です。

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